大濠
大濠公園池の水質改善
 
Ohori Park pond purification
アクアリフトの施用効果に関する研究の概要1
アクアリフトの施用効果に関する研究の概要2
 
大濠
大濠公園池浄化の経緯
 
Ohori Park pond purification
 大濠公園池では戦前から赤潮の発生などが時に起こっており昭和40年頃水質の悪化が顕在化した。
福岡県は、池水を曝気するために噴水を池内に建設するなど浄化対策を講じてきた。
(この噴水は公園の南側に隣接する福岡管区気象台の観測値に影響を与えるということで今は稼働していない)
昭和50年頃には学識経験者からなる委員会を作り、池水の浄化方法を検討することとなった。
当時すでに大濠公園池の水を浄化するには池の底に堆積した汚泥を浚渫し、取り除く以外に方法はないと言われていた。しかし,莫大な予算が掛かるという経済的な問題、浚渫した大量の汚泥を廃棄物としてどうするかという問題が生じ、大濠公園池の浄化対策は一時暗礁に乗り上げた。その後も水質は悪化を続け、アオコの発生や魚の大量斃死が頻発し、昭和60年には大濠池浄化に対する地元の要望が出るなど、市民運動にまで発展した。
このような大きな問題を抱えつつ、福岡県が大濠公園水質浄化事業をどのように解決していったのか。まず,この事業を現実のものとし、また成功させた要因として二つの発想の転換があった。

一つ目が,大濠公園の底に堆積している大量の汚泥の処分方法に関する考え方である。
通常は浚渫された汚泥は廃棄物として海洋投棄か海上埋め立て、あるいは陸上埋め立てなど、いずれにしてもどこかに運び出さなければならない。この問題を、汚泥を大濠池そのものの中に埋め込む工法を考え出すことで解決した。
これは、幸いにも池の底(汚泥)の下に大量の砂があることがボーリング調査によって確認されたことによるもので、この事から砂と汚泥を入れ替えるという発想が生まれた。

二つ目は水質保全に関することで、水質の改善目標を非現実的な高水準なものとせず、実現できると考えられる中程度のレベルまで引き下げ、その改善目標を「できるだけ濁りを取り除き透明感のある水質にするとともに、アオコなどが大量に発生したり、魚類が大量に斃死したりすることのないように改善する」としたことである。
この目標の特徴は、環境基準のように数字で表現された基準にはなってないところである。
もちろん、浄化施設を建設し、その施設によって水質を保全する計画であることから、施設を管理していく上から、池水水質の管理目標値が定められた。

以上の2点が「大濠公園水質浄化事業」を実現に導いた大きな要因である。
ただここで、技術的なこととは関係なく、事業化に踏み切ることができた理由がいくつかある。
それはアメニティ事業等に見られるように、居住環境に快適性を求めることが一般化する中で環境改善事業が広く理解され、また一度破壊された環境を元に戻すためにはそれなりの費用を必要とすること人々に認知され始めたことである。おそらく同様の計画であっても、福岡県が当初委員会を設立した昭和50年代の環境に対する社会情勢では実現は難しかったのではないかと考える。また、本事業計画が構想段階に入った時点で、学識経験者を核に福岡県の各部局の専門家によって組織された「大濠池浄化固化剤影響試験調査等検討専門委員会」の存在である。
この委員会は、事業が周辺環境に及ぼす影響をあらゆる角度から検討し、そこで生じた問題を一つ一つ解決しながら、環境保全に対し万全の措置を講じつつ、構想を実施計画へと具体化していった。これら環境に対する社会背景と保全対策が、本事業を成功へと導いた大きな要因であろう。

現在、大濠公園池は、これらの事業を終え、改善目標を十分に満足した水を満々と湛えており、
その保全は今後の大濠池水質の維持・管理にかかっている。

大濠公園池の浄化システムの概要1
大濠公園池の浄化システムの概要2